円形脱毛症は、ある日突然、コインのような円形または楕円形の脱毛斑が頭部や体毛に現れる病気で、「本当に治るのだろうか」と大きな不安を感じる方も少なくありません。結論から言うと、円形脱毛症は多くの場合、適切な治療を行うことで治る可能性が高い病気です。しかし、症状の範囲や重症度、個人の体質などによって、治癒までの期間や治療法は異なります。円形脱毛症の主な原因は、自己免疫疾患であると考えられています。通常、免疫システムは外部からの異物(細菌やウイルスなど)を攻撃して体を守る働きをしますが、何らかの理由で免疫システムに異常が生じ、自身の毛包組織を異物と誤認して攻撃してしまうのです。これにより毛包がダメージを受け、毛髪が抜け落ちてしまいます。この免疫異常を引き起こす誘因としては、精神的ストレス、肉体的疲労、遺伝的素因、アトピー素因などが関与していると考えられていますが、明確なメカニズムはまだ完全には解明されていません。円形脱毛症の症状は様々です。最も一般的なのは、単発型といって、1ヶ所だけ脱毛斑ができるタイプです。この場合、特別な治療をしなくても数ヶ月から1年程度で自然に治癒することも少なくありません。しかし、脱毛斑が複数できる多発型や、頭部全体に広がる全頭型、さらには眉毛やまつ毛、体毛など全身の毛が抜ける汎発型といった重症なケースでは、治療が長期に及んだり、再発を繰り返したりすることもあります。治療法としては、まずステロイド外用薬やステロイド局所注射が一般的に行われます。これらは炎症を抑え、免疫反応を抑制する効果があります。比較的軽症の場合に有効です。中等症から重症の場合は、局所免疫療法(SADBEやDPCPといった化学物質を脱毛部に塗布し、人工的にかぶれを起こさせることで免疫反応を変化させる治療法)や、ステロイド内服療法、紫外線療法などが検討されます。最近では、JAK阻害薬という新しいタイプの治療薬も登場し、難治性の円形脱毛症に対する効果が期待されています。重要なのは、自己判断で放置したり、効果の不明な民間療法に頼ったりせず、皮膚科専門医に相談することです。医師は症状の範囲や進行度を正確に診断し、個々の状態に合わせた最適な治療法を選択してくれます。