ある日突然、コイン程度の大きさで髪の毛が抜け落ちてしまう「円形脱毛症」。一つだけでなく複数できたり、頭部全体に広がったり、眉毛やまつ毛など体毛に及んだりすることもあり、本人にとっては大きなショックと不安を伴う疾患です。この円形脱毛症の治療は、何科を受診すれば良いのでしょうか。円形脱毛症の診療を専門とするのは、主に「皮膚科」です。皮膚科医は、円形脱毛症の原因や病態、治療法に関する専門的な知識を持っており、適切な診断と治療を行うことができます。円形脱毛症は、自己免疫疾患の一つと考えられています。何らかの原因で免疫機能に異常が生じ、自分の毛包組織を異物と誤認して攻撃してしまうことで、毛髪が抜け落ちてしまうのです。ストレスが誘因となることもありますが、必ずしもストレスだけが原因ではありません。遺伝的素因やアトピー素因などが関与しているとも言われています。皮膚科では、まず問診で発症時期や範囲、既往歴、アレルギーの有無、ストレスの状況などを確認し、視診で脱毛斑の状態(大きさ、形、数、活動性など)を観察します。ダーモスコピー(皮膚拡大鏡)を用いて、脱毛斑の辺縁に特徴的な「感嘆符毛(毛幹の根元が細くなっている毛)」が見られるかなどを確認することもあります。他の脱毛症との鑑別や、合併しやすい自己免疫疾患(甲状腺疾患など)の有無を調べるために、血液検査を行うこともあります。治療法は、脱毛斑の範囲や数、年齢、活動性などによって異なります。軽症で範囲が狭い場合は、自然治癒することも少なくありませんが、進行を防いだり、発毛を促したりするために治療が行われます。代表的な治療法としては、まず「ステロイド外用薬」の塗布があります。炎症を抑え、免疫反応を抑制する効果が期待されます。範囲が広い場合や進行が速い場合には、「ステロイド内服薬」が用いられることもありますが、副作用に注意が必要です。「局所免疫療法(SADBE療法、DPCP療法など)」は、かぶれを起こす化学物質を脱毛斑に塗布し、人為的に軽い接触皮膚炎を起こすことで、毛包への攻撃を別の方向へそらし、発毛を促す治療法です。広範囲の脱毛症に有効とされていますが、治療に時間がかかり、かゆみや湿疹などの副作用が出ることがあります。
月: 2024年8月
髪のボリュームダウンは禿げる予兆?
「最近、髪全体のボリュームが減ってきた気がする」「スタイリングしても、すぐにペタッとしてしまう」こうした髪のボリュームダウンは、多くの方が薄毛を意識し始めるきっかけの一つであり、「禿げる予兆」である可能性も否定できません。髪のボリュームが失われる原因はいくつか考えられますが、その多くが薄毛の進行と関連しています。まず、最も直接的な原因は、「髪の毛一本一本が細くなる(軟毛化)」ことです。男性型脱毛症(AGA)や女性型脱毛症が進行すると、毛包が徐々に小さくなり、そこから生えてくる髪の毛も細く、弱々しくなってしまいます。髪が細くなると、同じ本数でも全体としてのボリュームは減少し、髪がペタッとした印象になります。次に、「髪の毛の密度が低下する」こともボリュームダウンの原因です。毛髪の成長期が短縮されたり、休止期に入る毛包が増えたりすると、単位面積あたりの髪の毛の本数が減少し、地肌が透けて見えやすくなります。これもまた、髪全体のボリューム感を損なう大きな要因です。さらに、「髪のハリやコシが失われる」ことも影響します。健康な髪は、ある程度の弾力があり、根元から立ち上がりやすい性質を持っています。しかし、髪がダメージを受けたり、栄養状態が悪かったりすると、ハリやコシが失われ、重力に負けてペタッとしやすくなります。これにより、実際の毛量が減っていなくても、ボリュームがダウンしたように感じられることがあります。また、「頭皮環境の悪化」も間接的にボリュームダウンに繋がります。頭皮が乾燥していたり、逆に脂っぽかったり、炎症を起こしていたりすると、健康な髪が育ちにくくなり、結果として髪が細くなったり、抜け毛が増えたりして、ボリュームが失われることがあります。髪のボリュームダウンに気づいたら、それは単なるスタイリングの問題ではなく、薄毛が進行し始めているサインかもしれません。
髪の毛が抜ける外的要因
私たちの髪の毛は、日々の生活の中で様々な外的要因に晒されており、これらが原因で抜け毛が増えることがあります。健康な髪を維持するためには、これらの外的要因から髪を守る意識が重要です。まず、紫外線は髪と頭皮にとって大きなダメージ要因となります。紫外線は髪のタンパク質を破壊し、キューティクルを傷つけて乾燥やパサつき、切れ毛を引き起こします。また、頭皮も日焼けすることで炎症を起こし、毛根にダメージを与えて抜け毛の原因となることがあります。特に日差しの強い季節には、帽子や日傘、髪用のUVカットスプレーなどで対策をしましょう。次に、間違ったヘアケアも抜け毛を招く外的要因です。洗浄力の強すぎるシャンプーの使用は、頭皮に必要な皮脂まで取り除いてしまい、乾燥やかゆみを引き起こし、バリア機能を低下させます。また、シャンプーのすすぎ残しは毛穴を詰まらせ、炎症の原因となります。ゴシゴシと強く洗ったり、爪を立てて洗ったりするのも頭皮を傷つける行為です。シャンプーは自分の頭皮タイプに合ったものを選び、優しく丁寧に洗うことが大切です。頻繁なヘアカラーやパーマ、ブリーチなども、薬剤が髪や頭皮に大きな負担をかけ、ダメージを与えます。これらの施術は、髪のタンパク質を変性させたり、頭皮に刺激を与えたりするため、繰り返すことで髪が弱り、抜けやすくなることがあります。施術の間隔を空けたり、ダメージの少ない薬剤を選んだり、施術後のトリートメントケアをしっかり行うなどの配慮が必要です。また、ドライヤーの使い方も重要です。高温の熱風を長時間同じ場所に当て続けると、髪や頭皮が乾燥し、ダメージを受けます。ドライヤーは髪から20cm程度離し、全体を均一に乾かすようにしましょう。自然乾燥も、頭皮に雑菌が繁殖しやすくなるため、避けるべきです。さらに、牽引性脱毛症と呼ばれる、髪を強く引っ張るヘアスタイルが原因で起こる抜け毛もあります。ポニーテールやきついお団子ヘアなどを長時間続けていると、毛根に負担がかかり、その部分の髪が抜けやすくなることがあります。たまには髪型を変えたり、緩めに結んだりする工夫が必要です。これらの外的要因から髪を守り、適切なケアを行うことが、抜け毛を減らし、健康な髪を保つために繋がります。
自分でできる薄毛予防ヘアケア術
薄毛を完全に「治す」ことは難しくても、日々の適切なヘアケアによって、薄毛の進行を遅らせたり、頭皮環境を健やかに保ったりすることは十分に可能です。自分でできる薄毛予防のためのヘアケア術は、特別な道具や高価な製品が必ずしも必要というわけではありません。毎日の習慣を見直すことから始めましょう。まず、シャンプーの選び方と洗い方が基本です。自分の頭皮タイプに合ったシャンプーを選ぶことが重要です。乾燥肌なら保湿成分配合のしっとり系、脂性肌なら適度な洗浄力でさっぱり洗い上げるタイプ、敏感肌なら低刺激性のものを選びましょう。アミノ酸系やベタイン系の洗浄成分は、比較的マイルドで頭皮への負担が少ないためおすすめです。洗い方は、まずシャンプー前にブラッシングをして髪の絡まりを解き、ホコリや汚れを浮かせます。次に、ぬるま湯(38度前後が目安)で頭皮と髪を十分に予洗いします。これだけでも汚れの多くは落ちると言われています。シャンプーは手のひらでよく泡立ててから、髪ではなく頭皮につけ、指の腹を使って優しくマッサージするように洗います。爪を立ててゴシゴシ洗うのは、頭皮を傷つけ炎症を引き起こす原因になるので絶対に避けましょう。すすぎは、シャンプー剤が残らないように時間をかけて丁寧に行います。特に生え際や耳の後ろはすすぎ残しが多い部分なので注意が必要です。洗髪後は、タオルで髪を挟むようにして優しく水分を吸い取ります。ゴシゴシと強く擦るのはキューティクルを傷める原因になります。そして、できるだけ速やかにドライヤーで乾かします。自然乾燥は雑菌が繁殖しやすく、頭皮の臭いやかゆみの原因になることがあります。ドライヤーは頭皮から15~20cm程度離し、一箇所に熱が集中しないように、全体を均一に乾かしましょう。根本から乾かすのがポイントです。また、頭皮マッサージも血行を促進し、毛根に栄養を届けやすくするために有効です。シャンプー時や入浴後など、頭皮が温まっている時に行うとより効果的です。指の腹を使って、頭皮全体を心地よい強さで揉みほぐしましょう。育毛剤や頭皮用ローションを使用するのも良いでしょう。その際は、自分の頭皮の状態や目的に合った製品を選び、用法・用量を守って使用することが大切です。