AGAは本当に治るのか解説

男性型脱毛症(AGA)は、成人男性に最も多く見られる脱毛症であり、「AGAは本当に治るのか?」という疑問は、多くの当事者が抱える切実なものです。この問いに対する答えは、何をもって「治る」と定義するかによって変わってきますが、現代の医療においてAGAを「完治」させる、つまり体質を根本から変えて二度と発症しないようにすることは残念ながら難しいのが現状です。しかし、適切な治療を行うことで、薄毛の進行を大幅に遅らせたり、停止させたり、さらにはある程度の発毛を促して見た目の印象を改善することは十分に可能です。この状態を「治った」と捉えるのであれば、AGAは治療によって改善が見込める疾患と言えます。AGAの主な原因は、男性ホルモンの一種であるテストステロンが、5αリダクターゼという酵素の働きによって、より強力なジヒドロテストステロン(DHT)に変換されることです。このDHTが毛乳頭細胞にある男性ホルモン受容体と結合すると、毛髪の成長期が短縮され、髪の毛が十分に太く長く成長する前に抜け落ちてしまいます。これが繰り返されることで、徐々に薄毛が進行していくのです。AGA治療の柱となるのは、このDHTの生成を抑制する薬と、毛母細胞を活性化させる薬です。代表的な内服薬であるフィナステリドやデュタステリドは、5αリダクターゼの働きを阻害することでDHTの生成を抑え、AGAの進行を抑制します。これにより、抜け毛が減少し、毛髪の成長期が長くなることで、細く弱々しかった髪が太く成長する効果が期待できます。一方、ミノキシジルは外用薬(塗り薬)や内服薬(日本では未承認だが海外では使用されている)として用いられ、毛母細胞に直接作用して細胞分裂を活性化させたり、毛包周囲の血流を改善したりすることで発毛を促進します。これらの薬剤は、日本皮膚科学会のAGA診療ガイドラインでも推奨されており、その効果と安全性は多くの臨床試験で確認されています。治療を開始する時期が早ければ早いほど、また、症状が軽度であるほど、治療効果は高くなる傾向があります。しかし、これらの治療薬はAGAの原因に直接作用するものの、AGAの体質そのものを変えるわけではありません。そのため、治療を中止すると、再びDHTの影響を受けて薄毛が進行し始める可能性があります。

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