皮膚科で女性の薄毛治療を行う際、症状や原因に応じて様々な治療薬が処方されます。市販の育毛剤とは異なり、医師の診断のもとで使用される医薬品であるため、より高い効果が期待できる反面、副作用のリスクも理解しておく必要があります。女性の薄毛治療でよく用いられる代表的な治療薬には、以下のようなものがあります。まず、「ミノキシジル外用薬」です。ミノキシジルは、もともと高血圧の治療薬として開発されましたが、副作用として多毛が見られたことから、発毛剤として利用されるようになりました。毛母細胞を活性化させ、血行を促進することで発毛を促す効果が期待されます。女性の場合は、男性用よりも低濃度のもの(1%や2%など)が推奨されることが一般的です。頭皮に直接塗布するタイプの薬で、継続的な使用が必要です。初期脱毛(使用開始後に一時的に抜け毛が増える現象)やかゆみ、かぶれなどの副作用が出ることがあります。次に、「スピロノラクトン」という内服薬です。スピロノラクトンは、もともと利尿薬や高血圧治療薬として用いられていますが、男性ホルモン(アンドロゲン)の働きを抑制する作用があるため、FAGA(女性男性型脱毛症)の治療に用いられることがあります。特に、体内の男性ホルモン値が高い場合や、ニキビや多毛などの男性化症状を伴う場合に効果が期待されます。副作用としては、月経不順、乳房の張りや痛み、電解質異常(高カリウム血症など)などが報告されています。妊娠中や授乳中の女性は使用できません。また、「ミノキシジルタブレット(内服薬)」も選択肢の一つですが、日本では未承認薬であり、その使用は医師の慎重な判断のもとで行われます。外用薬よりも高い発毛効果が期待される一方で、全身の多毛、動悸、むくみ、低血圧などの副作用のリスクも高まるため、処方される場合は定期的な検査が必要です。その他、鉄欠乏性貧血が原因で薄毛が起きている場合は、鉄剤が処方されます。甲状腺機能の異常が原因であれば、甲状腺ホルモン薬や抗甲状腺薬などが用いられます。頭皮に炎症がある場合は、抗炎症作用のあるステロイド外用薬などが処方されることもあります。これらの治療薬は、必ず医師の指示に従って正しく使用することが重要です。自己判断で量を増やしたり、中断したりすると、期待した効果が得られないばかりか、副作用のリスクを高める可能性があります。