後頭部の薄毛が気になったとき、AGA(男性型脱毛症)や円形脱毛症といった代表的な脱毛症との関連を考える方もいるでしょう。それぞれの脱毛症と後頭部の薄毛の関係について見ていきましょう。まず、AGA(男性型脱毛症)についてです。AGAは、男性ホルモンDHTの影響を受けやすい前頭部(生え際)や頭頂部(つむじ周辺)から薄毛が進行するのが典型的なパターンです。後頭部の毛髪は、比較的DHTの影響を受けにくい性質を持っているため、AGAが原因で後頭部「だけ」が薄くなる、ということは稀です。しかし、頭頂部の薄毛(O字型)が進行し、その範囲が後頭部まで広がってきている場合には、後頭部も薄く見えるようになります。この場合、薄毛の中心はあくまで頭頂部であり、後頭部はその影響を受けている状態と言えます。マイクロスコープなどで頭皮を観察すると、AGA特有の軟毛化(髪が細く短くなる)が見られることが多いです。次に、「円形脱毛症」です。円形脱毛症は、自己免疫疾患の一種で、毛根が攻撃されることで円形または楕円形に髪が抜ける病気です。脱毛斑は頭部のどこにでもできる可能性があり、後頭部に発症することも珍しくありません。突然、境界明瞭な脱毛斑が現れるのが特徴ですが、中には境界が不明瞭で広範囲に抜けるタイプ(びまん型)もあり、この場合は他の脱毛症との区別がつきにくいこともあります。円形脱毛症は、AGAとは原因も治療法も全く異なります。もし後頭部に円形や楕円形の脱毛斑を見つけたら、早めに皮膚科を受診することが重要です。その他、「脂漏性皮膚炎」などの頭皮トラブルも後頭部の薄毛に関係することがあります。後頭部は皮脂腺が多く、蒸れやすいため、マラセチア菌などが繁殖しやすく、脂漏性皮膚炎を起こしやすい部位です。炎症やかゆみ、フケなどがひどくなると、抜け毛が増えることがあります。このように、後頭部の薄毛には様々な原因が考えられます。AGAの可能性、円形脱毛症の可能性、あるいは頭皮トラブルの可能性など、自己判断は難しい場合が多いです。正確な原因を知るためには、専門医による診断が不可欠です。